午前十時という時間帯は朝と昼の間で、出社直後の緊張感がそろそろ解れる頃とい
える。
社長出勤となると若干遅めと考えられがちだが、伊沢の場合は遅くとも午前九時前
には社長室にいる。もちろん各部署のミーティングに顔を出してからだ。
能村佳世子も社長秘書の肩書きを持っている以上、目立たぬ位置ながら社内ではほ
ぼ伊沢に随行している。もっとも社内で「内縁の妻」的な見方をされているのはあな
がち間違いでなく、出勤してくる伊沢の車の助手席にいることも稀ではないのだ
が……。
午前十一時から会議の予定であることは、伊沢も十分に理解しているはずだった。
しかし、社長室の片隅ではなぜか秘書のブラウスが少しはだけられている。出社時
に着ていたジャケットは社長のものと並んでデスクへ無造作に放られていた。
「やめてっ、やめてください……」
伊沢は佳世子のブラウスに手を入れ、ブラジャーに覆われた乳房をまさぐる。
分刻みのスケジュールなのは社長業の常識だが、秘書の身体を愉しむことは入るは
ずがない。
佳世子としては、セックスの直後に会議に同席することはさすがに避けたかった。
そのため普段の馴れ合いじみたもの以上の抵抗を試みたが、伊沢は男の腕力で制圧し
ようとする。
「あっ、はぁっ……」
乳首に爪を立てられて、佳世子は思わず甘い声を漏らしてしまう。
伊沢の口許が歪む。つい先ほど、社員たちに流暢なスピーチを披露してみせた社長
という姿から徐々に離れ始めている。
佳世子の乳首がやや痼ってきたのを確認すると、伊沢はなぜか自分のアタッシェ
ケースを開いた。
「……今日はね、面白い趣向を用意してあるんだよ」
上気させた頬を伊沢の方に向ける佳世子。
その眼が捉えたのは、輪にされた麻縄だった。
「なっ……なにをなさる気ですかっ?」
ここは会社ですよ、と強い口調になりかかったところで、佳世子の両腕が背中で括
られる。
「あぅんっ」
信じられない手際の良さであった。
佳世子はいつの間にか、両手首だけでなく乳房にも縄をうたれていた。シルクのブ
ラウスの布地が食い込んだまま、縄によって上下から挟まれた乳肉がたわむ。
堅くなってきているピンク色の乳首を、伊沢の指が弾いた。
「あんっ!」
はっきりとした喘ぎ声が、社長室に響く。
「縄で拘束された巨乳秘書か……いい眺めだ」
伊沢の口唇の端がつり上がる。
彼の言うように、大きめの乳房が縄によって強調されていた。
佳世子が伊沢に身体を許すようになってけっこうな期間が過ぎているが、縄などで
拘束されてのセックスについては全く経験がない。
ただ、いままで関係を持った男すべてに記憶の検索範囲を広げると、時折佳世子を
縛って愉しんだ男は何人かいた気がする。
とはいっても、縛られることに特別快感を覚えたわけではなかった。
普段とは少しだけ違う、セックスをより愉しむためのちょっとしたスパイス的な感
覚――と、佳世子自身は思っていたはずだったのだが。
「あっ、あぁっ……」
反応が特に敏感になってきたのは、ソファに身体を預けて前屈みの姿勢にされてか
らだった。
尻を上げる格好になり、スカートを捲られて、パンティを下ろされる。
この流れそのものは、それまで社長室でもたびたび繰り広げられてきた光景だが、
パンティがいつもよりも湿っていることは佳世子にもはっきりとわかっていた。
「……本当は、こういうことをされるのが好きなんだろう?」
汗ばんできた尻を撫でながら、伊沢は秘書の顔をのぞき込んだ。
反射的に、佳世子は顔を背ける。しかし伊沢の手が尻から股間に滑ってきたのを悟
ると、びくんと全身を震わせて反応してしまっていた。
「あっ……はぁんっ」
(ちゅっ、ちゅくっ、ちゅくぅっ……)
水気を含んだ、湿った音が聞こえ始める。
部屋中に響きわたるほどではなくても、伊沢と佳世子の耳にははっきりと流れてき
ていた。
社長秘書が職場で縛られて女陰を濡らしているということを、事実として物語って
いる。
「どうなんだ、好きなんだろう?」
伊沢の中指が、奥の方まで掻き分けてくる。
「はぁぁっ!……いやぁ、そんなこと、仰らないで……」
すでにヌルヌルになっていた秘書の秘所を、円を描くようにかき回す。
「あんっ、あんっ……あっ、あっ、あっ、あっ……」
指の動きに併せて、丸い尻肉が揺れる。
リズミカルな股間への愛撫に、自由に動かせる腰を振って悶えているのは明らか
だった。
喘ぎ声がさらに高くなるのを待ってから、伊沢はいったん女陰から指を引き抜く
と、絡みついている愛液を秘書の口唇に擦りつける。
佳世子はすぐに、舌を出して応えた。当然のように。
「……いやらしい口唇だ」
縛られた社長秘書の表情からは、職務に従事する凛々しさの類が消え失せていた。
そんな佳世子を見て、伊沢は思わず下卑ていると自嘲したくなるほどの笑みを浮か
べてしまう。
乱れたスーツから乳房と女陰を露わにして、縄で縛られている秘書の姿など、さす
がに社員たちは考えてもいないだろう。
なにより伊沢の興奮を煽るのは、拘束している女体が上気していることだった。頬
も、乳房も、そして尻もうっすらとピンク色がかかっており、この非常識的な光景に
佳世子自身もまた興奮していることが手に取るようにわかるのだ。
伊沢はジッパーを下ろすと、佳世子の身体をソファに押さえつけた。
愛液で溢れかえっている女陰に、すっかり勃起したペニスをあてがう。
「あぁっ……いっ、入れてくださいぃっ……」
伊沢は口許だけで笑いながら、亀頭でクリトリスを弄った。
「はぁんっ!」
「佳世子のやらしいヌルヌルマンコにオチンチンをくわえ込ませてください、だろう
?」
挿入の欲望からなんとか踏み止まって、伊沢はさらに佳世子を苛める。
理知的でプライドの高そうな秘書を肉欲で屈服させる悦びは、社長という立場を利
用しなければなかなか味わえないものだ。
「ほら、入れて欲しかったらちゃんとおねだりするんだ!」
縄の間からこぼれてる乳肉をぐいぐいと揉みしだく。さらに堅く痼った乳首を摘み
上げると、佳世子はあられもない喘ぎを漏らしながら言われた言葉を復唱する。
「あっ、はぁぁっ……かっ、佳世子のやらしいヌルヌルオマンコに……おっ、オチン
チン、を、くわえ込ませてくださいぃっ……!」
おねだりはほとんど哀願に近く、末尾はほとんど叫ぶような口調だった。
伊沢は両の乳房をわし掴みにしたまま、膨れ上がった男根を女陰へと一気に沈めて
いく。
「あぁっ! あぁぁーんっ!」
深々と貫かれた女体が、弓なりにしなった。いくら防音効果があったとしても、外
へ漏れたと言われても反論できなさそうな秘書の嬌声が響き渡る。
「あんっ、はぁぁんっ……あんっ、あぁんっ、はぁんっ!」
伊沢はそんな佳世子を、窘めたりはしなかった。いや、佳世子の膣内を味わうのに
夢中で、周囲のあれこれにまで気を配る余裕がなかったという方が正しいだろう。
「もっと尻を振るんだっ!」
伊沢が右手を振り上げると、喘ぎや結合とは違った、乾いた音が鳴る。
「はぁんっ! あんっ、あっ、あっ、あぁーっ!」
尻を叩かれても、痛いとは言えなかった。社長に命令されたように、ペニスの動き
に併せて尻を振ることの方が、いまの佳世子にとっては遥かに大事だった。
男に尻を叩かれることが、いまは折檻のようには思えなかった。まるで自分の肉体
をさらなる快楽へと導いてくれているようにも思える。もちろん、屈辱に感じること
もない。
縛られた肉体を半ば無理やり陵辱されているというのに、もっと犯してほしいと身
体が求めていた。結合部分から床へ滴っている蜜のような愛液が、それを証明してい
る。
「あんっ、あぁんっ、突いてぇっ!」
佳世子の求めに呼応したのか、伊沢のペニスが子宮口近くまで突き上げてくる。
「もっとぉっ……あはぁっ、もっと突いてえぇっ! あぁーんっ!」
伊沢は佳世子の背中に覆い被さるような姿勢で、リズムもなにも忘れてペニスを打
ちつける。
冷静でいられなくなったのは明らかで、直後に控えた会議のことすら脳裏にはな
い。
考えているのはただひとつ、このまま秘書の膣内に射精することだけだった。
「あっ、あぁーっ! いくぅっ、いくいくっ、はぁぁーんっ!」
佳世子の全身が痙攣を始め、膣肉が伊沢のペニスを波打ちながら締めつけた。
伊沢は声にならない声をあげ、思い描いていたように秘書の秘所へと射精を始め
る。一滴残らず膣内へ注ぐべく、一時射精が終わってからも丹念に擦りつけていた。
「あはぁぁっ……」
ソファに前屈みの姿勢のまま、セックスの残滓に浸る佳世子。
しかし伊沢は、あれほど夢中になっていたにも関わらず、射精が済むとすぐにペニ
スを引き抜き、乱れた服装を戻していた。
佳世子は乱れそうな歩様をなんとか整えながら、会議場へと向かう伊沢の背後に続
いている。
スーツはそのままだったが、ブラウスは縄の跡が残ったのでさすがに替えた。ス
トッキングも、愛液が滴ったので穿き替えている。
ただし、パンティは替えていなかった。
しかも膣内に射精された後、女陰を拭われることなくそのまま穿かされている。流
し込まれた精液が逆流してパンティにシミを作る恐れがあることは、十分に想像でき
た。
確かに気をつけなければならないのだが、佳世子としては別段嫌とは感じていな
い。
なぜなら、今日中にあと一度は、セックスの機会があるのだから。
2005.12.31
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